文章を書くことは好きですか

 ある時期まで、自分は文章を書くのが得意だ、と思っていた。その時期の終わりに、自分は別に得意でもなんでもなかったんだなと気づいて、文章を書くのが好きと自認し直した。でも別に今はそうも思えない。提出しなきゃいけない文章は遅々として進まず、メールの返信やシフトの提出LINEも億劫だ。まあ、普遍的に文章ならなんでも書くのが大好きという奇特な人間以外、「嫌な文章は嫌」だろう(ところが読む、という方になるとだいたいなんでも読むのが好きというひとが少なくなさそうで面白い)。

 

 ぼくは書くことが好きというより、書くことが上手く進んでいるときだけ、手が止まらないで脳がページにレンダリングされているその瞬間のみにある刹那的な陶酔が好きなんだと思う。脳や手がドライブされていく感覚。それだけが好きで、べつに文章を書くことそれ自体とか、ものを考えることは得意でも好きでもないんだと思う。書き進んでいるときの、文字を入力して、文字が書かれ、そしてその次の文字が紡がれる、その間の、字と字の間隔にあるトリップ。

 読書もそうで、上手く脳にハマり込んだときの脳がぎゅうう、となる感じが好きで、それ以外ずっと億劫だと思っている。本が好きだと思っていたのも、昔の話になってしまった。

 

 ぼくが文章を書くのが得意だと勘違いしたのは高校の推薦入試を受けたときで、小論文がほとんど満点に近い出来で入学が決まった。偏差値からするとちょっと上の場所だったから、ぼくはそのときからずっと「場違い感」を思い続けているのかもしれない。年季が入っている。

 

 とどのつまり、ぼくは文章が下手だ。そう開き直るしかない。このエントリーの構成もめちゃくちゃで、読書の話とかいらなかったのかもしれない。でもどこかで、ぼくは書かずにはいられないとも思ってしまう。一度書き出すとこのくらい長くなる。いま800文字にいかないくらいだ。Twitterでは短すぎる。脳が動いている。気持ちいい。ずっとこの快楽が続けばいいと思う。でもいつか脳が止まる。書くことがなくなる。こうやって思考をずっと書き留められればいいのに。ではそれが終わったら? 手が止まったら? 思考が終わるのだろうか。そのときぼくは何も考えていないのだろうか。

 回遊魚みたいに書かずにはいられないくせに、でも億劫だし下手なのだ。少しずつ上手くなりたいものです。何者にもなれないだろうぼくの、ちょっとした願いです。