映像の解像度

 解像度。やはり4Kがいいとか、8Kが欲しいとか言われる。

 昔の僕は解像度至上主義みたいなところがあって、パキッとした映像であればあるほどいいと思ってた。音もソリッドで透徹で、どこまでも見渡せるほどに澄み渡り、鋭いものであればあるほど良いと思っていた(というか、音質については今でもそう思っているフシはある)。

 けれど、是枝裕和が撮った米津玄師の『カナリア』のMVを観て「ああ、こういうのもいいかもな」と思った自分がいた。意図的にフィルムグレインがたっぷりと乗せられて、ざらつく映像が心を撫でて行く。視覚野に突き刺さってくるように情報量が迸る画質もいいけれど、それ以外の良さもわかった気がした。

 すると世界が少しだけ拡がったように見えた。楽しめるものの幅が広がり、自分が立ち寄れる場所が増えたように思える。同時に、世界がじんわりと薄くなってしまったような気もした。締め切った部屋に満ちていた濃密な空気が、どこかに漏れ出してしまって、僕はまた1つつまらなくなってしまったような気がした。